コラム/エッセイ

ヤングオンコロジースペシャリストの声

Essay: Voice of Young Specialists

私のがん看護 ― 患者さん中心のコミュニケーションを目指して

看護師:江藤美和子

江藤 美和子 Miwako Eto

看護師

ベルランド総合病院看護部 The Bell-land General Hospital

急性期総合病院で、がん看護専門看護師をしています。がん患者さんが多く入院されている病棟を中心にコンサルテーション活動を行っています。また、がん相談を担当し、患者さんとご家族のお気持ちの辛さについて面談やお電話でサポートをしています。
オンコロジーナースとしてのスタートと直面した課題

大学病院の消化器外科で看護師人生をスタートし、周術期、腫瘍内科病棟、緩和ケア病棟、外来と様々な場面で、がん患者さんや医療従事者の方々との出会いがありました。

特に忘れられないのは、大学病院で3年目の時、普段は冗談ばかり話して明るく振舞っていた患者さんが、「もうがんばるだけ、がんばってきたんだ。皆さんの“がんばって”という言葉はもうつらい」とさみしげな表情で私に語られた場面です。今まで自分は患者さんのお気持ちをくみ取ったコミュニケーションをしていなかったことを気づかせていただいた、貴重な経験です。

オーストラリアでの留学体験

自分にとって看護とはなんなのか、仕事を離れて考えてみたいと思い、大学病院を退職後、外国語大学で英語を学び、オーストラリアの南オーストラリア州アデレードに留学しました。大学の看護学部に編入し、現地の看護学生と同じ病院実習にも取り組みました。英語の勉強はしていたものの、現地の病院実習で言葉の違いについていけず、苦悩の毎日・・・。

そんな様子をみて、実習病院の看護師長さんが、「言葉はそんなに壁なの? みんな、あなたをサポートしたいと思っているのよ。何でも困ったときには言いなさい」と声をかけてくださいました。それ以来、自分は周りの方に支えられていること、言葉やコミュニケーションの壁を越えられるかどうかは自分次第と思い、まず自分からオープンに相手に接していくことを心がけるようにしています。

経験から見出した私のがん看護

いろいろな経験をして思うのは、やはりコミュニケーションがケアの根幹であるということ、向き合う姿勢が大切だということです。患者さんの不安なお気持ちをじっくり傾聴すること、そして身体面と社会面のケアも丁寧に行うことががん看護の基本姿勢であると考えます。

私がモチベーション高くがん看護に携わり続けられているのは、患者さん、ご家族、がん医療・看護に携わる方々との出会いとサポートがあり、一歩一歩前に進む勇気をいただいているからだと思います。

若いオンコロジーナースが生き生きと働くために

オーストラリアから帰国後、看護教育に携わる機会がありました。学生さんに教えるということは、知識や技術だけでなく、自分自身の看護観を明確に言葉にすることも求められます。教育に携わったことは、今専門看護師としてコンサルテーション活動をする基礎となっており、これもまた貴重な経験でした。

終末期がん患者さんへのケア実習の指導に携わることが多かったのですが、学生さんたちは、「患者さんとの関係に困っている私を励ましてくれて、実習が楽しくなりました」、「話を聞いてもらいアドバイスがあって、ケアの方向性が明確になって安心できました」、「もっと先生のお話が聞きたいです。学生は先生のお話から学びたいと思っています」など、気持ちや思いを直球で表現してきました。

学生さん、若い看護師さんたちが辛そうな患者さんとどう接したらいいのか、どんなケアを提供したらいいのか悩み葛藤しているときに、看護師として教育者として気持ちを受けとめて共に悩みケアを考え、勇気を出して前に進めるように、そっと背中を押してあげられるような存在でありたいと思います。

今後の活動について

現在担当するがん相談でも、笑顔とオープンなコミュニケーションを心がけ、患者さんとご家族からも、「話ができる場所があってよかった」、「安心しました」というお言葉をいただいております。

来年度には、当院に緩和ケア病棟が新たに設立されます。対象となる患者さんとご家族のご希望に沿った治療と療養場所の選択が実現するように、様々な壁を越えてチーム医療を実践する調整者でありたいと思います。また、その中で、今後を担う看護師が生き生きとケアができるように支援する教育者・サポーターであり続けたいと思います。

(2013年12月執筆)

ちょこっと写真、ちょこっとコメント

緩和ケアチームに所属し活動をしておりますが、チームの売りは“団結力”です。

ときには羽目をはずし、飲み会をしてコミュニケーションすることでリフレッシュし、明日への活力としています(右の写真)。

(2013年12月執筆)

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