コラム/エッセイ

納得して抗がん剤治療を受けていただくために
~薬学専門家からの提案~

Understanding your therapy for good treatmen.

Vol.02

知ることから始めましょう!-がん医療を受けるための8つのポイント

どんな方でも専門外のことはくわしくありません。「がん」という病気に関しては、最悪を連想する方が多いと思いますので、医師の話を冷静に聞くことは不可能かもしれません。ましてや、医学の専門用語を使って説明を受けても理解はむずかしいかもしれません。

しかし、できるだけ冷静に医師の話を聞くことは、その後の治療を選択するために、重要なことと思います。

医師の説明をよく聞き、よく理解するために、多くの皆さんと同様に私も、患者さんに以下の8つの方法をお勧めしています。

(1)家族や友人など、信頼できる人と一緒に医師の説明を聞く

信頼する人がそばにいるだけで安心できますので、少しは冷静になれるかもしれません。

(2)録音器を持参し、医師の説明を録音する

後から再確認するために録音しておくことは重要と思います。録音する場合には、医師に「録音してもいいですか」と了承をもらってください。それが人間としての礼儀と思います。

(3)説明は言葉だけでなく、医師にノートに書いていただく

医師にノートに書いていただくことにより、医師もよりわかりやすく、みなさんに理解できるように説明することが多くなりますし、後からそのノートをみることで理解が深まると思います。

(4)勧められた治療法を鵜呑みにしない

医師に勧められた治療を鵜呑みにするのではなく、医学的知識がある人に録音テープを聴いてもらったり、ノートをみせて、意見を聞いてから決断することをお勧めします。セカンド・オピニオンなどを受けるのもよいと思います。

(5)わからないことがあったら何度でも質問する

ご自身の治療のことですので、「わからない」ことは「わからないので教えてください」と何度でも質問するようにしましょう。わからないのが当然ですので、遠慮しないで質問してください。

次に、以下のような説明が医師から行われるかどうかを確認してください。

(6)診断の根拠は何か?

一般にがんであることを確定診断するためには、その組織から採取した細胞を組織学的に確認する必要があります。X線やCTなどで影があっても、腫瘍マーカーが高くても、「がんの疑い」というだけで、確定診断されたとはいえません。

(7)どこの部位(臓器)のがんで、どの程度進んでいるのか?

がんの部位、進行度、身体の状態で、最適な治療法が変わります。

(8)治療法にはどのようなものがあり、医師はどれを勧めるのか?その理由は?

治療法の選択は、慎重にした方がよいと思います。治療法にはいくつかの選択肢がありますので、「治療法はこれしかない」と押しつけるような医師は信用できないかもしれません。

治療法を選択する時には、適切に評価された臨床研究で優れていると認められた標準的治療といわれる治療の中から、皆さんの価値観、好みに合わせて選択することが望ましいと思います。

このとき、多くの人が誤解していることは、最新治療が優れていると思われていることです。最新治療はマスコミにもよく取り上げられますので、効果があると思われがちです。しかし、最新治療の多くは、臨床研究で有効性や安全性が評価されたものが少ないということを考えなければなりません。

以上のように、8つのポイントに従って、がんやがんの治療法を知ることは、質の高いがん医療を受けるための基本だと思います。どうぞ皆さん、よく聞き、よく理解して、質の高いがん医療を受けるようにしてください。

※執筆者の瀬戸山氏が運営する爽秋会クリニカルサイエンス研究所では、一般向けと医療関係者向けに、がん医療に関する情報を提供しています。こちらのサイトもご利用下さい。

(2008年3月執筆)

瀬戸山 修
瀬戸山 修
1949年生まれ、爽秋会クリニカルサイエンス研究所代表。がんの初期から終末期までの一貫したがん医療の質の向上を願い、薬学、特にがん薬物療法に関する臨床薬理学、臨床疫学(EBM)の立場から、最新のがん医療情報の発信、薬剤師や看護師の教育研修を行っている。