コラム/エッセイ

チームオンコロジーへの道

Essay: Road to TeamOncology

チームオンコロジーのスキルとメンタリングを学んで

薬剤師:飯原大稔

飯原 大稔 Hirotoshi Iihara

薬剤師

岐阜大学医学部附属病院 Gifu University Hospital

私が初めてチームオンコロジーに出会ったのは、The 2nd TeamOncology Workshopに参加した2008年11月のことでした。岐阜大学医学部附属病院では外来化学療法室に薬剤師が常駐することになり、私はその責任者として配属され、7カ月程経過した頃のことです。

大学卒業後から、がん治療を目指すまで

大学を卒業後、薬剤師として岐阜大学医学部附属病院に勤務しはじめた当初、私は循環器・呼吸器・腎臓の内科治療を担当する病棟に配属され、薬剤管理指導を行っていました。その経験から感染症に興味を持ち、社会人学生として進学した大学院では、病原体制御学講座で病原菌の薬剤耐性や感染の原因菌の迅速診断方法の確立に取り組みました。

そして、そこで得た感染症の知識を実臨床でも役立てたいと考えていました。ところが、卒業を間近にした11月、新たな薬剤部長を迎えたことをきっかけに、思いがけず私の目指す道はがん治療へ変わっていきます。

新たな薬剤部長の下では、専門性をがん治療へ移行して、がん化学療法制吐対策ガイドラインやがん化学療法の副作用対策の院内ガイドラインの作成に携わりました。その過程で、がん治療において薬剤師が果たす役割の一つとして、がん化学療法における副作用の対策を強く意識しました。

しかし、これまでの病棟での業務とは異なり、外来化学療法室では、あまり面識のない医師とも協力して仕事をしていかなければなりません。慣れない業務の中、自分がやりたいこととやっていることのギャップに苦しむこととなりました。

JME Programで学んだメンタリングの大切さ

そうした中、上述したように、当院の医師と一緒に2008年11月に開催されたThe 2nd TeamOncology Workshopに参加する機会を得ました。Workshopではこれまで意識したことのない「リーダーシップ」「コミュニケーション」「ミッションとビジョン」といったチームオンコロジーの本質を学ぶことが出来ました。

また、その後に参加させていただいたJapanese Medical Exchange (JME) Programを通して学んだメンタリングは、私の仕事に対する態度だけでなく、人生に対する考え方にも大きな影響を与えました。

具体的には、私にとって薬剤部長はメンターでありますが、その強い影響力と直接の上司ということから、業務の中で対立する意見が生じたときのコンフリクトマネジメントは非常に難しいものでした。

しかし、研修を通してMD Andersonのメンターよりメンタリングを受け、それを継続していくことにより、治療法に関する衝突や外来化学療法室における薬剤師業務の展開等、多くの問題を乗り越えていくことが出来ました。

以上のような経験から、MD Andersonに留学中に作成したミッションとビジョンを改定したので、以下に記します。

【Vision】

最高のチーム医療、科学、教育を用いて、患者が満足できる世界一の外来化学療法体制を構築する。

【Mission】

患者のQOLと治療効果を向上するための支持療法を確立し、そして薬剤師の診察によって確実にそれを患者に届ける。

チームオンコロジーのスキルをより多くの人に

チームオンコロジーのエッセンスである「リーダーシップ」「コミュニケーション」「エビデンス」はスキルであり、学び改善することが出来ます。外来化学療法室に常駐当初の迷いは今はもうありません。

現在は、外来化学療法担当の薬剤師と共有したビジョンも作成し、医師の診察前に患者と面談を行い、新規副作用発現の有無や、継続している副作用の状態把握、疼痛評価、内服状況確認などを行い、必要な薬剤の処方を提案するという新たな業務も開始しました。

本年度から、Japan TeamOncology Programの執行委員もやらせていただいています。この素晴らしいチームオンコロジーのスキルと技術をより多くの人に広めていけたらと思っています。

(2012年 5月執筆)

ちょこっと写真、ちょこっとコメントMy interest at a glance:

“LIVESTRONGプロジェクト”

このプロジェクトは、ロードレーサーであり、キャンサーサバイバーでもあるランス・アームストロングが設立したランス・アームストロング財団が行っている、がん患者支援プログラムです。

私は、医療者の視点を持ってこの活動に参加したいと思い、2012年1月よりLIVESTRONGのリーダーを務めさせていただいています。

写真は、LIVESTRONGプロジェクトの黄色いリストバンドで、がん患者へのサポートの姿勢を表す象徴的なものとして世界中で広く知られています。

(2012年 5月執筆)

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